小鳥先輩である。

師走の寒さにくじけることなく小鳥先輩はノーパンである。
厳密に言うとノーパンオンタイツなのだが
やはり厳密に見るとノーパンはノーパンである。

できることならばノーパンオンスカートでオフィスを闊歩したいのだが、小鳥先輩は容易く腹を下すたちなのである。
いくらちゃんと、それこそ血がにじみににじむほど用を足したあとに尻を拭いたとて
用を足した尻には「大」の分子が、目には見えぬ分子がちりばめられている。
いくら小鳥先輩でも「大分子」を携えた尻で直接スカートに触れるのは避けたい。

防波堤としてのタイツ
防空頭巾としてのタイツ
小鳥先輩がタイツを着用する理由はこれにつきる。
防寒は二の次である。そもそも防寒のことなんて考えていたらノーパンはやってられないのである。
喩ひ寒さに凍えようとも私は自由でいたい。
小鳥先輩のノーパン道はいつも無駄に険しい。


こんなくだらんことを言ってるうちに今年もあと二週間である。


小鳥先輩は毛づくろいをしている場合ではないことにハタと気がつく。
会社の若い男子とTENGAの話で盛り上がっている場合ではない。
気を抜くとくちばしから
「あ〜やりてぇ〜」
と独白がこぼれ落ちそうになるのをデスクで必死でこらえている場合ではない。

あまりに耳垢がでるので耳掻きに夢中になって会社に遅刻している場合ではない!


小鳥先輩は来年ダーティーサーティ略して「ダーティー」になるのである。
サラサーティのターゲット層入り!
サラサーティは今後小鳥先輩をペルソナとしてマーケティング戦略を練るべきである。
あらゆる意味でこんなにさらさらさらさらしている三十代はなかなかいない。


日々の営みも過去も夢も希望も、
かつて小鳥先輩が「掴んだ」と信じたたものはすべて砂であった。
気がつくと足元には平坦な砂浜が広がっている。
お山を作り、トンネルを通す。川がぐるりと山を囲い、ダムだって作れる。
砂風呂で汗をかき、しじみを掘る。
「ほら、さくら貝」
通りすがりの男子に差し出す。
運がよければ一緒に星の砂を探してくれる。
満月を眺め、接吻をして、朝日とともに男は砂になる。
一抹の寂しさと、やりきれなさとが胸を去来するが、小鳥先輩は知っている。
お山をつくり、トンネルをとおし、また誰かがやってくる。
小鳥先輩は知っているのだ。
この平坦な小鳥先輩の遊び場の一部になりに、誰かが必ずやってくるのを。


とここまで、夢想して小鳥先輩はハタと気がつく。
そもそもノーパンにサラサーティは無用・・・。


最近野ざらしになっている浜辺の毛でも手入れして今日は寝ることにする。

ちなみに、小鳥先輩は浜辺の毛を線香で焼いて、間引きする。
小鳥先輩はこれを焼畑農業と呼んでいる。
さらにちなみに、たまに火傷する。小鳥先輩はこの火傷を雌の心意気と呼んでいる。