小鳥先輩である。
小鳥先輩は筋肉痛である。
体中痛い。下半身を中心に痛い。
足を曲げるのが兎角辛いので便器に座るのは一苦労である。
まず後ろ手で、便器に手を付き的を絞り、そこにスコーンと尻を落とす。
すごい勢いで尻を落とすものだから、その内尻で便器を割るんじゃないかと
内心ヒヤッヒヤである。
恐怖!!新橋在勤便器尻割り女!
妖怪みたいなコピーだな。。。と小鳥先輩はほくそ笑む。


ちがーう!!


重要なのは何故小鳥先輩が全身筋肉痛かということである。


今流行りのランニングをはじめたのである。
小鳥先輩はいまやランニングバードである。


ランニングバード


夜な夜なランニングバードである。
もはや青梅街道は小鳥先輩の滑走路である。
ゼェハァいいながら小鳥先輩は走る。
しんどくて辛くて辛くてしょうがない。


「やっとられへんわ!もうあきまへんわ!」
まぬけ顔した脳内カワウが言う。
カワウ


「うっせーよカワウ!川帰ってマスでも掻いときやがれ!」
脳内ミヤコドリご一行様が応戦する。
ミヤコドリご一行様


熾烈極める脳内バードウォーは走り出してから15分程度で収まる。
15分たつと、なんだか気持ちにも体にも余裕が出てくるのだ。
このままどこまでも走っていってしまえるような気分になる。


交配で大事なのは最初の15秒だけどな!

小鳥先輩は何かと下ネタを持ち出したがる。悪い癖である。
ともかく、一人下ネタコーナーを繰り広げられるぐらいの余裕が出てくるのである。


一人下ネタに飽きると、小鳥先輩はセンチメンタルな気持ちに浸るごっこをはじめる。
スピッツやらクラムボンやらのせつなーぁい曲ばかりのプレイリストを聞きながら、
記憶の引き出しから、ピッカピカに美化した思い出をひっぱりだし、浸る。
あぁ、クマタカとの美しき日々よ。


クマタカ


クマタカとは、と説明するのがめんどくさいので端折るが、
要するにクマタカは小鳥先輩の昔の番相手で、
その強烈なキャラクターをして数々の伝説を作った鷹である。
小鳥先輩はクマタカとの恋愛の最中にうつ病を患ったほどだ。
決めゼリフは
「空気の無駄遣いすんな」である。



しかし、ランニングをはじめて10日もするとクマタカいぢりにも飽きる。
小鳥先輩は走りながら、内に内こもっていく。


ヘドロににんにくやら、味噌こうじやら、柔道部の部室の空気やら、
陰金田虫やら、タイガーバームやらなんやら煮込んで29年寝かせました!ボジョレー小鳥。
自分の精神の底のほうに滞留している、芳醇な味わいなそれに目を向ける。


走る、息があがる、
なぜ我はこんなにも矮小なのであろうか。問う。


走る、太ももを意識して前に出す、さらに息があがる。
果たしていつまで我はこの矮小な己を続けていかねばならぬのだろう。問う。


繰り返し、繰り返す。
我はなぜ走るのだろう。噴出す汗を拭いながら、この汗に己の汚らわしさが少しでも
溶け出ていてくれればいいな。と小鳥先輩は思う。


29年かけて芳醇に仕上げたボジョレー小鳥だ。
浄化するにも同じく歳月を必要とするだろう。


走る、ただ走るために走る。
我はランニングバードなり。


家につき、汗で重くなった衣類を脱ぎ、シャワーを浴びる。
自分が自分に約束をした一日の営みを今日も果たしたことに満足しながらタバコを吸う。


布団に入り、小鳥先輩はふと思う。


これだけ走りこんでいれば、膣筋もさぞかし鍛えられるていることであろう。
次から小鳥先輩と交配するオスはすべて三擦り半でフィニッシュさせられることになるであろう。


オス諸君は覚悟しておくように!
鼻息荒く小鳥先輩は眠りにつく。


本当に昇天させたいのは・・・


小鳥先輩はすでに夢の中である。